新型コロナウィルス感染症の影響を受け、近年需要が高まっているエンバーミング。具体的にどのようなことを行うのか、どのような会社に就職するのかなど想像できないという方もいらっしゃるかと思います。そこで今回は、エンバーミングの仕事内容や資格取得方法、また資格取得後の就職先について解説していきます。目次エンバーミングとは?この記事を読んでいるあなたは、エンバーミングについて、ある程度ご存じのことと思いますが、簡単にご紹介します。エンバーミングとは、 遺体衛生保全のことで、下記のような場合に執り行われます。ご遺体に防腐・殺菌処置を行い、10日~2週間の間、ご遺体が腐敗することなく、生前に近い姿で保たれるため、時間に余裕をもって、ご遺族が故人とのお別れをできる。災害・事故・感染症などで亡くなられた場合、ご遺体を生前に近い姿に修復・殺菌して保持できるので、ご遺族が安心してご遺体に触れることができる。旅行・出張・戦争など遠隔地で亡くなった場合、航空機ではドライアイスが使えないため、エンバーミングが必要となる。一般社団法人日本遺体衛生保全協会(IFSA)に所属し、エンバーミングを行う専門家のことをエンバーマーと言います。災害や事故などで、損傷のひどいご遺体を修復してきれいにし、最期の別れの際に、故人の尊厳を守り、ご遺族の心が少しでも癒されるようにする、意義あるお仕事です。エンバーミングと納棺師の違い納棺師はご遺体の傷跡を保護したり、傷口を見えないようにするケアが仕事です。例えば、皮膚の一部に大きな傷口があった場合、納棺師は傷口から血や体液が出ないように、止血してメイクで傷口をカバーします。それに対し、エンバーマーはご遺体の修復・保全が仕事です。エンバーマーは皮膚を縫合して傷口を閉じ、ご遺体用のワックスを施し、普通の皮膚のように修復します。またエンバーミングでは、ご遺体を殺菌・消毒して、腐敗しにくくすることが大きな違いです。故人を生前の姿にできるだけ近いようにするのが、エンバーミングです。エンバーマーに向いている人エンバーマーは単に技術だけを身につければ良いというものではなく、ご遺族の気持ちを汲み取るなど、高い精神性が求められるお仕事です。タレントの壇蜜さんはエンバーマーとして一時期お仕事をされていました。エンバーミングについて、下記の言葉を残しています。エンバーミングの仕事では「遺族の方々の声に耳を傾け、己を殺す」ということが求められます。そういったことを繰り返すうちに、私自身も大きく成長することができたように思います。夜間の対応や様々な状況のご遺体を取り扱うことから、体力面や精神面も強くないと厳しいお仕事と言えます。エンバーミングには資格が必要?納棺師には資格がいりませんが、エンバーマーは資格が必要となります。エンバーミングの資格を取るには、一般社団法人日本遺体衛生保全協会(IFSA)が指定する施設で技術と知識を学ぶか、海外に留学して学ぶかのどちらかで資格を取得することになります。最後は試験に合格しなければなりません。納棺師の方が、エンバーマーの資格取得を望む場合もありますが、時間がかかり、試験が国家試験よりも難しいことから、諦める方も多いようです。エンバーマーは国家資格ではないため、規制する法律がありません。なので手荒な処置をしたり、湯灌やエンゼルケア(死後処置として行われる遺体清拭など)をエンバーミングと偽って、高額な料金を請求する悪徳な業者の存在が問題視されています。エンバーミングを行う前に、遺族に内容の説明をし、理解し同意の上で「依頼書」に署名をもらうことを厳守しなければなりません。IFSAはエンバーマーの国家資格化と法制化を急いでいるとのことです。これから先には国家資格になる可能性があるという点から、エンバーマーの資格を取ると良いかもしれませんね。受験資格は?学歴の条件などはある?エンバーマー養成専門学校の入学資格は、高校卒業またはこれに準ずる学校を卒業・外国の学校教育において12年の課程を修了・文部科学大臣が行う高校卒業程度認定試験、または大学入学資格検定に合格という方になります。日本にある養成学校は今のところ、神奈川にある1件だけです。この養成学校で一般教養や葬祭学、遺体衛生保全、実習など、必要な知識や心構え、技能を学びます。卒業後はIFSAのエンバーマー資格試験を受験します。合格できればエンバーマーになれますが、国家資格ではありません。専門学校の費用や年数は?概要修業年限:2年(昼間)募集人員:エンバーミング学科25名費用1年目納付金 合計1,155,000円入学金:15万円授業料:75万円(年額)校外実習費:10万円(年額)施設費:15.5万円(年額)2年目納付金 合計1,005,000円授業料:75万円(年額)校外実習費:10万円(年額)施設費:15.5万円(年額)【別途費用】1年次:32万円2年次:10万円※上記金額には教科書代、制服代などが含まれています。※2020年実績のため、変更する場合もあります。引用:一般社団法人日本遺体衛生保全協会エンバーミング資格の試験内容・難易度エンバーマーの試験は年1回(3月の予定)しかなく、卒業後すぐにエンバーマーとして従事されたい方は一回で合格したいですね。しかし、合格率は約50~60%とされており、簡単な試験ではないのです。しっかりと在学中に勉強しておきましょう。エンバーミング資格取得後は?エンバーミングは日本では、まだ一般に知られていない部分があるので、本格的に人材が必要になるのはこれからだと思われます。エンバーマーの求人を調査しました。神奈川県にある某企業の求人案内の例勤務時間:9:00~18:00給料:月30万円+エンバーミング報奨金休日:月間8日~9日応募要件:IFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)認定のエンバーマーの資格を有していること学歴・資格:高卒以上、普通自動車運転免許(AT限定可)エンバーミングの将来性・需要エンバーミングは、生前の姿に近い形でお別れできるという点や、衛生的な面から、近年日本でも注目されるようになっています。現在のコロナ渦においては、危篤時に家族が立ち会えないなど規制も多く、亡くなってからしか顔を合わせることができなかった、という声も聞かれます。そのような場合には、せめてエンバーミングを施して、安心して故人と触れ合うことができるといいですね。このような背景から、エンバーミングは今後需要が高まることが予想されます。まとめエンバーミングの資格を取得するためには葬儀や遺体衛生のための知識が必要なことはもちろん、一般教養やマナー実習など、幅広い知識が必要です。資格を取得するまで一定数時間と費用は要しますが、その分専門的な知識や技能が身につき就職・転職にも活きるといっても過言ではありません。これからますます需要が高まるであろう「エンバーマー」という仕事への興味・関心を深めるきっかけになったのであれば幸いです。エンバーマーに興味のある方、資格取得を目指している方はぜひ、この記事を参考にしてくださいね。最後までご覧頂きありがとうございました。お仕事が気になった場合は、アドバイザーに聞いてみよう!お仕事が気になる、話をもっと詳しく聞きたいという方はお気軽に「葬儀のおしごと」にお問い合わせください。業界に精通したアドバイザーがお仕事について詳しくご説明いたします。