葬儀屋さんは普段の私たちがあまり意識しない職業です。どんな仕事なのか実感が湧きにくいので、どの程度収入があるか分からない人が多いでしょう。葬儀屋さんのお仕事は ご遺体やご遺族と関わるお仕事なので、働き先として希望する人が少ないからお給料が高いのでしょうか。または葬儀がない時期にはお仕事が少ないから、不安定で安いのでしょうか。この記事では、葬儀屋さんのお給料の実態や、お手当・残業代などを紹介します。お仕事探しの参考にしてください。目次葬儀屋の給料は安い?高い?結論、葬儀屋さんの年収は350〜550万円と、一般的な企業とほぼ同程度の年収が見込めます。金額だけ見ると高くもなく安くもない印象ですが、もらう給料が仕事内容に見合っているかで、実感は変わるでしょう。やりがいがあって残業も少なければ妥当と感じたり、拘束が長くつらい仕事であれば少ないと感じるものです。では、葬儀屋さんの収入実態について説明していきます。葬儀屋の年収葬儀屋さんの平均的な年収は350〜550万円です。正社員で新卒入社した年の年収は、会社の規模にもよりますが290万~310万円程度となっています。同業者が正社員で転職した場合の年収は、同業経験者が優遇される場合が多く、350万~440万円です。未経験での転職者は研修期間が含まれるため、初年度は300万円程度となります。厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」では、葬儀屋さんの平均年収は386.1万円(平均年齢:42.3歳)と発表されました。これは平均の値なので、新卒や未経験者が含まれていたり、都市部と地方で違うこともありますが、裏付け資料になります。葬儀屋さんの年収が350〜550万円程度あるというのは、間違いないでしょう。ひと月あたりの給料葬儀屋さんのお給料は、東京都で勤務する独身者の場合、交通費などを除外した月手取り額は23~24万円程度です。初任給だと、新卒正社員の場合約19万円~21万円ぐらいです。業界経験者の場合は、約20万円〜25万円が見込めます。これは正社員として働いた場合の月給です。実際にはパートやアルバイト勤務の従業員も多く、パート・アルバイトの平均の時給は1,298円です。葬祭スタッフ、運転手、生花担当など様々な仕事があり、交通整理ガードマンなど日給制のお仕事もあるので、あくまで参考としてください。厚生労働省発表「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、葬儀屋さんの月額給与の平均は28.1万円とあります。これは保険料などが天引きされる前の額です。年齢や経験、就業先が大手か中小かや資格など、条件によって変わりますが、2年目以降は独身者の場合毎月23~24万円程度手取りがあると言えます。平均年収との比較葬儀屋さんの年収を他の職業の平均と比較してみましょう。遜色ない金額といえます。国税庁の「令和3年分民間給与実態統計調査」によると、給与を受け取る職業で1年を通じて勤務した1人当たりの平均給与は 443 万円です。葬儀屋さんの年収は大体350〜550万円なので、金額を見るとほぼ平均的な年収と言えるでしょう。葬儀業界で仕事を考えているなら、年収問題はクリアできます。葬儀屋と同じ給料相場の業界紹介葬儀屋さんの平均年収は386.1万円、月額給与の平均は28.1万円とお伝えしました。では、同じ程度収入を得られるお仕事には、どのようなものがあるのでしょう。葬儀屋さんのお仕事は、緊急性があったり、ご遺族のケアがあったり、大変だと思います。そのお給料は仕事の難易度や重責に見合ったものなのか、知りたいところです。消防士消防士の平均基本給月額は約33.5万円、平均の給与は約40.0万円、平均年収は約635万円です。総務省の「令和3年4月1日地方公務員給与実態調査結果」で報告されています。いつ仕事が入るかわからず夜のお仕事も多い職種なので、葬儀屋さんとの共通点を感じますが、給与待遇は恵まれていると感じます。危険が多いお仕事なのに意外に少ないと思うかもしれませんが、消防士は経験年数が上がり、階級が上がると基本給の待遇は良くなります。また、採用試験がどの受検をしたかでスタートの給料が変わり、様々な手当があるため、金額に差が出ます。令和3年度の東京消防庁職員募集サイトの例を見ます。消防官(Ⅰ類・大学卒業程度)採用試験に合格した場合の初任給は月額約25万円です。これは幹部候補としての採用です。対して消防官(Ⅲ類・高校卒業程度)採用試験に合格した場合の初任給は月額約21万円と、合格した試験によってこのように給料に違いがあります。付加される手当とは次のようなものです。一般的な手当地域手当扶養手当住居手当通勤手当期末手当消防士の基本給は「公安職俸給表(一)」というもので決まっていて、地域の物価や家族がいるかなどは考慮に入っていません。そこで一般的な手当が付きます。消防士ならではの特殊手当出動手当深夜特殊勤務手当救急手当非常災害業務手当危険作業手当不快作業手当その他にも、扱う業務車両による手当やヘリコプターの乗務員の手当、小隊長業務の手当など、各地消防本部で様々な手当があり、一般市民の生活を守る消防士の業務に見合った支給があります。不動産業・物品賃貸業厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、「不動産業、物品賃貸業」の平均月収は32.6万円です。 年収に直すと391.3万円となります。不動産業界だけでは、国税庁の「令和3年民間給与実態統計調査」によると平均年収は425.8万円です。物品賃貸業社に関する年収は扱う物品が多種多様で、それぞれの平均が取れないので、ここでは不動産業に含まれる不動産賃貸の仕事として考えます。ご了承ください。月収についての情報は少なく、実はインセンティブ制度を取る会社が多いためでした。基本給は20万円前後に設定されることが多く、営業成績で上乗せされていきます。他には、宅建資格などを持っていると資格手当が出る会社もあります。インセンティブで、収入が上がるかどうかがかかってくるため、営業力のある人にはやりがいがある職種です。金融営業・銀行金融営業全年代の平均年収は、440万円です。各業界全体の営業職の平均年収が415万円程度なので、営業職の中では年収は高めでしょう。厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、銀行員の平均年収は307.7万円です。これはメガバンクから地方銀行まで含まれてる年収なので、大手は767.3万円ですから年収が低い銀行とはかなり開きがあります。以前は年収がかなり高い業界でしたが、平成バブルやリーマンショックで、大手金融機関も安定しているとは言い切れない業界です。葬儀屋の求人情報昔ながらの葬儀屋さんの場合、棺の手配から通夜、お坊さんの手配、葬儀から納骨までを1社の社員数人で行っていたイメージがあった業界です。でも現在は分業化が図られ、それぞれの分野でエキスパートを目指せます。どこの業界でも得意不得意の仕事があるように、葬儀屋さんも得意分野を活かしたお仕事があるのです。ではどんな職種の求人があるかを見てみましょう。営業葬儀屋さんの営業職は、なかなか仕事の内容をイメージしにくいのですが、次のようなお仕事をしています。・病院や老人ホームなどへの営業・法人向けの葬儀サービス(社葬や社員の福利厚生の法人契約)の提案営業・葬儀の相談所での営業(互助会などでは会員サービス)・店舗での仏具や墓石の接客販売・ダイレクトメールやチラシの制作・ポスティングこのように、販売するサービスによって違いはありますが、お客様の要望を聞き出し、要望に合わせてサービスと商品の提案をしています。必要なときに葬儀屋に連絡をもらうための、必要なお仕事です。事務事務職といっても、葬儀屋さんの仕事は多岐にわたるので、様々な関連先と連絡を取り合ったり、営業の代わりにお客様からの連絡を受けたりと、重量なお仕事です。そのため葬儀屋さんの事務は、一般的な会社の事務と違って、接客スキルが必要になります。事務職は一般的に平日週5日勤務をイメージしますが、葬儀屋さんは年中無休で営業しています。事務職もシフト制で働いていることが多いのです。葬儀の使用した物や人員の代金支払など、主に社外に関係するお金の管理の会計、社員の給与など社内に関係するお金の管理の経理、福利厚生など社員の働きやすさに関係する総務なども、事務職の扱いになります。縁の下の力持ちとして、葬儀屋さんになくてはならない裏方さんです。葬祭ディレクター葬祭ディレクターとは、厚生労働省が認定した資格です。葬儀に関わるあらゆる知識と技術を持っていると証明されたプロフェッショナルです。葬祭ディレクターは、葬儀の全体をプランニングして、式場の準備や式進行を執り行う重要なお仕事です。まず葬儀の前に遺族からの要望を聞き取って、葬儀の内容や費用の打ち合わせをします。葬儀の当日は、会場の設営を確認したり、参列者への対応、葬儀の司会を行う場合もあります。その他、遺影の写真の手配、遺体の搬送などの式前に必要なことや、火葬場や霊柩車といった式後のことなど、葬儀に関すること全てを取り仕切るのです。葬祭ディレクターには1級と2級があり、受験資格が存在します。2級が「葬祭実務経験を2年以上有する者」で、1級は「葬祭実務経験を5年以上有する者」となっています。つまりはまず、一般の葬儀担当者として2年以上勤めなければ受験資格がありません。この資格を持っていると資格手当がある会社もあり、同業者への転職も有利になります。葬儀スタッフは誰でもなれますが、一流と外からも認められる資格があるとまた違います。生花スタッフ葬儀の祭壇や装飾で使用する生花の仕入れ、保管から、祭壇の企画やデザイン・製作、葬儀当日の祭壇設営から撤収など、生花に関わる仕事全般を行います。家族や会社名などを添えて作る供花や、出棺前に棺へ入れる別れ花なども作ります。花を使い黙々と作業するように思われがちですが、遺族の要望を汲んで生花をプロデュースするので、コミュニケーションスキルも重視されます。厚生労働省が定めた葬祭業の「職業能力評価基準」には、評価基準に「生花」があり、現在の葬儀では花が重要な物になっているのです。大手葬儀屋さんでは「生花部門」が社内にあることもありますが、下請け業者の場合も多くなっています。死者へ花を手向けるのはどこの国や宗派でも行われ、生花スタッフは葬儀に重要な役割があります。ドライバー葬儀屋さんのドライバーは、霊柩車や寝台車の担当者か送迎バスなどのドライバーです。兼務していることは少なく、霊柩車の場合小さな葬儀屋さんでは葬祭担当スタッフが兼務することもあります。霊柩車は葬儀場から火葬場へご遺体を運搬するための車両です。では寝台車とは何かというと、亡くなった人やその家族を乗せて、病院などから安置場所や斎場へ移動するための車両になります。霊柩車や寝台車はご遺体を乗せて運ぶ大切なお仕事です。細心の注意が必要ですし、ご遺族が同乗するのでマナーも重要になります。そのため、直接雇用が基本です。勤務時間は霊柩車や送迎バスの担当なら、火葬場の開いている時間が昼間なので、昼間の勤務になります。霊柩車と寝台車の両方を担当する場合は、夜に亡くなられる方もいるので、シフト勤務になっていることが多いです。ご遺体やご遺族の移動はただ車を運転するだけではなく、気配りのできる人材が求められます。納棺師・湯灌師「おくりびと」という映画で知られるようになった職業ですが、ご遺体を棺に納めるお仕事で、納棺師と湯灌師の名称を明確に使い分けていることはあまりありません。湯灌(ゆかん)とは、ご遺体を入浴させ、洗浄することを指します。 「湯灌の儀式」があり、現世の汚れを洗い清め、来世に導かれるようにという願いを込めて行われています。納棺とは、故人を家族と対面させるためにご遺体を整えて、棺に納める仕事を指します。つまりはどちらの作業も一貫して行うので、呼び名が葬儀屋さんによって違うことがあるのです。納棺師・湯灌師のお仕事に近いもので、事故や病気の跡を隠すため、納棺前にご遺体の損傷を修復する作業があり、これはエンバーミングと言います。死化粧を施す作業があるため誤解されますが、エンバーミングはエンバーマーという仕事が別にあるので、納棺師や湯灌師の仕事ではありません。納棺師・湯灌師はご遺体に直接触れる仕事なので、気になる方には向きませんが、ご遺族の気持ちに寄り添い、故人を送る気持ちで丁寧な作業をすると、感謝されるお仕事です。葬儀屋の求人は多い?少ない?葬儀屋さんの求人数はというと、実は手が足りていない隠れた需要が大きい業界といえます。2009年の日本の死亡者数は114万1920人であったのに対し、2021年の死亡者数は145万2289人と確実に増えていますが、葬儀業界の就業人口がその間に増えていないため、仕事量は確実に増えています。つまり、確実に手が足りていない状況です。そして、葬儀業界の人材募集が認知度の低さで、地方では特に採用に苦労している会社があります。探せばある求人を求職者が見落としている可能性は高いでしょう。葬儀屋には手当はある?葬儀は予定の立たないものです。夜に亡くなる方も多いので、葬儀屋さんの仕事は仕事によって急務が多いものなので、もちろん各種手当があります。まず、夜間に入る葬儀の連絡を受けるために勤務すれば、当直手当があります。ご遺体の搬送に従事すれば、搬送手当が出ます。残業すれば超過勤務手当がありますし、休みに仕事となれば休日出勤手当もあります。また、大手の場合は地域手当というものがあり、地方より都市部の物価が高いことで生活の費用を上乗せする手当です。大手企業ほど手当が厚い予算のある大手の方がもちろん、従業員への手当は厚くなっています。各種社会保険はもちろんのこと、有給休暇、懐妊・育児休職制度、各種休職・休暇制度が揃っています。家族のいる社員も安心して働けることで、仕事を続ける原動力となるようです。中小の葬儀屋さんの収入は減少傾向といわれますが、安定している大手は今後も仕事がなくなることはありません。福利厚生の良さを狙ってみるのも良いでしょう。残業代はもらえる?ボーナスは?葬儀屋さんも労働基準法を守って仕事をしなければなりませんから、残業代は出ます。仕事の特殊性で24時間体制の職場が多いため、シフト勤務などで働いたり、急な仕事もあるので、超過勤務手当や休日出勤手当が出ることもあります。厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」では、葬儀屋さんの平均ボーナスは484,600円と発表されました。会社の業績によりますが1年間の総支給額は、月給の2〜4ヶ月程度の支給が平均的と言えそうです。地域や職種・スキルによって差がある都市部の場合は地方よりも給料が高い場合が多くなります。都市部の方が生活物価が高いため、社員の生活費もかさみます。また、葬儀の経費がかさむこともあり、その分還元されているとも考えられます。また、業界経験者は貴重な戦力なので、経験者の給与は高くなる傾向があります。葬祭ディレクターなどの資格があるとなお、即戦力として期待できるため、資格手当があったり、給料が良くなります。葬儀業界の今後は安泰?衰退?葬儀は、これまで生きてきた故人とのお別れをする、大切な儀式です。人間の文化として有史以前から行われてきたことで、そうそう簡単に不要な文化とはならないでしょう。ただ、今後は衰退する可能性があります。超高齢化社会ですが、2040年には死者数はピークを迎えると言われていて、葬儀にかける費用も年々少なくなっています。医療費の高騰で闘病にお金がかかり、家族だけの葬儀など葬儀の小規模化でお葬式の単価は現在でも減少傾向にあります。これから需要が爆発的に増える業種ではありません。葬儀業界はこれまでのしきたりが多い分、まだまだITなどを使った合理化が進んでいません。そこで業務改善や生産性向上を提案できる新しい人材が求められるでしょう。たとえば、ネットを使った墓参りができるお寺などが良い例です。葬儀業界は需要がなくなることはありません。でも変化して時代の流れに対応し、対策することが存続のため必要といえます。葬儀の簡素化とは?これまでの葬儀は、葬儀の前日にお通夜があり、遺族が葬儀の日までご遺体の寝ずの番をして、線香を絶やさないようにしていました。通夜に来た弔問者には精進落としという軽食が振舞われました。そして葬儀当日は、故人の生前の仕事の関係者や、家族の職場の同僚まで弔問に訪れる大規模な葬儀が多く、家族の会食の席を設けたり、火葬場で待つ間も待合室で軽食が提供されるなど、色々と手間とお金がかかるものでした。近年、コロナの感染予防などもあり、小規模な葬儀が増えています。それ以前から、葬儀は縮小傾向にありました。なぜなら、これまで企業に務めている社員の家族の葬儀は、職場の人員を動員して行ったりしていたのですが、現在企業にそんな余力がなくなってきているからです。職場での付き合いで参列といったことがなくなったので、家族や親族、知り合いだけの簡単な葬儀で十分になっているのです。わざわざ大きな葬儀場を維持する必要がなくなったため、近年は小規模の葬儀会館が増えてきています。撤退したコンビニの跡地は駐車スペースも取れ、葬儀会館を立てるには好条件なので事例も増えています。まとめ普段あまり考えない葬儀屋さんの給料からひも解いてみました。お給料の実態は、他の業種と比べて遜色なく収入を得られることが分かり、大手葬儀会社ならば手当や福利厚生も充実していることが分かりました。葬儀に従事する偏見がまだあるので、なかなか踏み出せないお仕事ではありますが、葬儀はなくなる仕事ではないので、従事してみると安定感があるでしょう。ただ、死者を弔うお仕事ですから、ご遺体に対面したりご遺族の悲しみに寄り添ったり、精神的な負担はあります。葬儀業界で働くのは、給料面の待遇だけではなく、人の役に立つことややりがいが感じられるかなど、モチベーションを保てるメンタルが必要でしょう。ご遺族の悲しみに寄り添い、滞りなく葬儀を執り行うのは、感謝があればこそでしょう。人から感謝されることが心の栄養と理解できる人なら、葬儀業界も良い選択です。あなたの転職活動がよい仕事に巡り合えますように。お仕事が気になった場合は、アドバイザーに聞いてみよう!お仕事が気になる、話をもっと詳しく聞きたいという方はお気軽に「葬儀のおしごと」にお問い合わせください。業界に精通したアドバイザーがお仕事について詳しくご説明いたします。